第1回 FINAが目指している方向性と各国際大会の特色

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第1回 FINAが目指している方向性と各国際大会の特色

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皆さん、こんにちは。 1979年(昭和54年)大学卒業の黒田克己です。 

成城水泳会HPで海外水球事情をご紹介するページを頂いたので、今後世界の水球事情、国際水泳連盟(FINA)が目指している方向性、各大会の特色、ルールの解釈・運用等についてご紹介して行きたいと思います。

今回は先ずFINAが目指している方向性と各国際大会の特色についてご紹介します。

近代水球は1880年代にイギリスで考案され、それが国中に温泉がある為、当時から冬季にも水球をプレーする事が可能であり、しかも水球に似ているハンドボールが国技であったハンガリーに直ぐに伝わったと言われています。 ご存知の通り、現在ハンガリーの国技はハンドボールと水球です。

1900年に開催された第二回パリオリンピックで早くも男子水球が公式競技となった為、水球はオリンピックに於いて最も歴史が古い球技です。 女子水球は2000年のシドニーオリンピックで公式競技として採用された為、オリンピックに於ける男女の歴史は100年の差がある訳です。

球技がオリンピック種目として存続する為には世界の五大陸で広く普及している事が必要です。一方、水球の現状を見ると、女子はアメリカ、オーストラリア、スペイン、ロシア、カナダ等、各大陸の強豪が覇を競っているものの、男子は世界の強豪がセルビア、ハンガリー、クロアチア、モンテネグロ、イタリア、スペインと上位を占めるのは欧州列強であり、時にアメリカ、オーストラリアが上位に入る事があるという状況です。 野球、ソフトボール等、必ずしも五大陸で広く普及していない球技がオリンピック種目としての存続を危うくしている状況下、水球としても安穏とはしていられません。

 そうした状況下、FINAでは下記の様な問題意識を持って水球の普及・振興に努めています。

  1. 一般観客が見て分かり易く、面白い事
  2. レフェリーの判定が分かり易い事
  3. ボールがスピーディーに動き、スペクタクルな得点シーンが多く見られる事
  4. 身体が大きな選手だけが有利になるのではなく、スピードのある展開を出来るチームにチャンスが与えられる事

 これらの問題意識を整理し、方向性を見出して行く為、FINAは2014年2月にメキシコ・カンクンで「世界水球会議」を開催し、野球、バスケットボール、アメフト、アイスホッケー等、人気を博しているプロスポーツの専門家から水球が外部から見てどう見えるか、何をどう改善すれば良いかという点を検討しました。 そこで得られた主たるコメントは、(1)水球はレフェリーの笛が頻繁に鳴り過ぎるし、どういう反則が起こっているのかが良く分からない、(2)大会のプレゼンテーション(見栄え)をもっと良くすべきというものでした。

レフェリー判定等については次回以降に改めてご紹介するとして、今回はこの様な問題意識を踏まえてどういう国際大会が行われているかという点についてご紹介したいと思います。

【FINA主催大会】

1.オリンピック(4年毎に開催)                            

 水球に於いてもオリンピックが世界最高峰の大会と言われています。 男子は12チーム、女子は8チームに参加権があり、選出基準は下記の通りです。 2012年のロンドンオリンピック・アジア予選が千葉で開催された事は皆さんの記憶にも新しいと思います。

a.  男子   
  開催国  1
  各大陸代表  5
  世界予選通過国  3
  前年のワールドリーグ優勝国  1
  前年の世界選手権上位2国  2

 

 b. 女子  
  各大陸代表  5(開催国は当該大陸代表となる) 
  世界予選通過国  3

 

c.     アジアの場合、アジア予選がアジア選手権という形で開催されます。 日本男子代表は2003年のアテネオリンピック予選、2012年のロンドンオリンピック予選でカザフスタンに苦杯を喫しています。 尚、2008年の北京オリンピックの際は当時の規約で中国が自動的にアジア代表の枠を取得した為、アジア予選は行われませんでした。 2016年リオデジャネイロオリンピックのアジア予選は男女とも今年12月16-20日に中国・佛山で開催されます。

2.世界選手権(奇数年開催)

a. 世界選手権は男女とも16チームずつに参加資格が与えられます。 参加資格は下記の通りです。

開催国 
 前年のオリンピックあるはワールドカップの上位4国
 前年のワールドリーグ上位2国
 各大陸予選通過国

9  (欧州3, 米州2,アジア2,オセアニア1, アフリカ1)

 

 b. 今年7-8月に開催されるカザン世界選手権(ロシア)には日本は男女とも昨年9月のアジア大会で2位となった為、出場権を得ています。 尚、昨年のワールドカップで男子はカザフスタンが、女子は中国が夫々世界選手権への出場権を得た為、今回は男女ともアジアからは日本、カザフスタン、中国が参加します。

3.  ワールドリーグ:

  a.  この大会は2002年から新たに企画された大会で、下記の通り、各大陸での予選ラウンド開催による 水球の普及振興及びテレビ放映に焦点を当てています。

 i.   各大陸で予選ラウンドを行ない、その上位8チームが世界決勝(スーパーファイナル)に進出する

 ii. テレビ放映を推進する。

  b.  日本でも2008年と2010年にアジア・オセアニア予選ラウンドが開催されたのでご覧になった方もおられると思います。 尚、その後色々な試行錯誤が行われ、2014年以降下記の形式 で予選ラウンドが行う。

 i.   欧州 :3グループに分かれて秋から翌年春に向けてホーム&アウェイの予選ラウンドを行う。

ii.  他地域:インターコンチネンタルトーナメントという大会に米州、アジア、オセアニア、アフリカのチームが参加し、予選ラウンドを行う。

 c.     今年のスーパーファイナル参加権は下記の8ヶ国となっています。

  i.       スーパーファイナル開催国  1

 ii.       欧州の各グループの1位     3

iii.      インターコンチネンタルトーナメント上位4チーム 4

 d.   又、ワールドリーグは種々のルール変更のテスト大会という機能も担って来ました。 例えば現在は1ピリオド8分、ハーフタイム5分というルールになっていますが、ワールドリーグ設立当初はこの方式を採用し、一時的に1ピリオド9分という時期もありました。

 e.   日本は2009年と2013年に二回男子代表がスーパーファイナルに進出し、共に7位となっています。

4.ワールドカップ:

 この大会はオリンピックが開催されない偶数年に開催され、FINAカップとも呼ばれています。元々は前年の世界選手権上位8チームに参加権が与えられましたが、2010年大会から各大陸の代表にも出場権を与えようという事に規約が変更され、現在の出場権は下記となっています。 尚、日本は男女ともワールドカップに出場した実績はありません。

開催国 
 各大陸代表
 前年の世界選手権上位2チーム

 

5.世界ジュニア選手権(20歳以下):

a.  大会開催年に20歳以下である選手に出場権があり、奇数年に開催されます。参加枠は男女とも16-24チームと柔軟性があります。 アジアには通常3枠が与えられています。

b.  今年は男子がカザフスタン・アルマティで9月に、女子がメキシコ・メリダで8月に開催され、昨年のアジアジュニア選手権で共に優勝した日本男女代表チームが出場します

6.  世界ユース選手権(18歳以下):

a.  大会開催年に18歳以下である選手に出場権があり、偶数年に開催されます。参加枠は世界ジュニア選手権と同様です。

b.  昨年は男子大会がトルコ・イスタンブールで、女子大会がスペイン・マドリッドで開催され、日本は男女代表が夫々出場しました。

【アジア水泳連盟主催大会】

  1. アジア大会: 4年に1回(オリンピックが開催されない偶数年)開催され、男女共上位2チームが翌年の世界選手権への出場権を得ます。
  2. アジア選手権: アジア大会が開催されない偶数年に開催されます。 次回2016年大会は11月に東京で開催されます。 この大会も男女上位2チームが翌年の世界選手権への出場権を獲得します。
  3. オリンピック大陸予選: 本大会もアジア選手権という名称が付く事があり、最近では2003年(アテネオリンピック予選)にカザフスタン・アルマティで、2012年(ロンドンオリンピック予選)が千葉で開催されています。 2016年リオデジャネイロオリンピック予選は今年12月16-20日に中国・佛山市で開催される事になっています。
  4. アジアジュニア選手権(19歳以下): 偶数年に開催されます。 大会開催年に19歳以下の選手に出場権があり、翌年の世界ジュニア選手権(20歳以下)に同年代の選手が参加出来る仕組みになっています。
  5. アジアユース選手権(17歳以下): 奇数年に開催されます。 大会開催年に17歳以下の選手に出場権があり、翌年の世界ユース選手権(18歳以下)に同年代の選手が参加出来る仕組みになっています。 今年は10月1-7日にタイ・バンコクで開催される予定です。

以上